結論から書きます。給与所得がある会社員が不動産投資を始めた初年度、私の経験では登記費用・不動産取得税・ローン事務手数料などの初期費用がまとめて経費に落ちるため、不動産所得は50万〜150万円規模の赤字になることが珍しくありません。その赤字を給与所得と損益通算すれば、勤務先が源泉徴収で先取りした所得税の一部が確定申告で戻ってきます。私が最初に買った築古アパートでは、初年度に約90万円の不動産所得赤字が出て、確定申告の結果18万円強の還付を受けました。ただし、この仕組みには初心者が必ずと言っていいほど踏む落とし穴があります。最大のものが「土地取得にかかる借入金利子は損益通算できない」という規定です。私は大家歴15年で収益不動産を複数棟保有し、原状回復もリフォームも業者に頼らずDIYで行って費用を業者見積りの1/5以下に抑えてきましたが、税金の話は工事と違ってやり直しがきかない。この記事では、損益通算の基本メカニズムから土地利子の按分、初年度費用の一括経費、減価償却で意図的に赤字を作る戦略の反動、青色申告の純損失3年繰越、確定申告の実務手順、そして赤字が続くと融資審査に響くリスクまで、実額と判断軸で整理します。なお本稿は2026年時点の一般的な制度理解に基づく私見であり、個別の適用は税理士等の専門家に確認してください。
不動産所得の赤字を給与と相殺する基本メカニズム
会社員の給与は、毎月の源泉徴収と年末調整で税額がほぼ確定しています。ここに不動産所得というもう一つの所得を足すのですが、日本の所得税は原則として複数の所得を合算して課税する「総合課税」の仕組みを取っています。不動産所得はこの総合課税の対象です。したがって、不動産所得が赤字なら、その赤字分だけ給与所得を含む他の所得から差し引ける。これが損益通算です。
数字で追う相殺の流れ
私が実際に体験した初年度の例で追ってみます。額面給与700万円、給与所得控除などを差し引いた給与所得が約520万円だったとします。この年、不動産所得が90万円の赤字でした。損益通算すると、課税対象となる所得は520万円ではなく520万円−90万円=430万円に圧縮されます。所得税率が20%(課税所得330万〜695万円の区分)なら、90万円×20%=18万円が、本来より少なくなる所得税額です。源泉徴収で先に18万円多く納めていた計算になるので、確定申告でこの18万円が還付されるわけです。住民税(概ね10%)も翌年度分が9万円ほど軽くなります。合わせると赤字90万円に対して約27万円のキャッシュが戻る、あるいは軽減される計算になります。
通算できる所得・できない所得の順序
損益通算には順番があり、まず同じグループ内で相殺し、それでも残った赤字を給与所得などにぶつけていきます。不動産所得の赤字は、事業所得や給与所得など「経常的な所得」と通算できるのが実務上のポイントです。一方で、株式の譲渡損失や先物取引の損失は不動産所得と通算できません。私は初年度、証券口座の損失も同じ確定申告で処理しようとして混同しかけましたが、税務署の相談窓口で「グループが違う」と指摘されて整理し直しました。損益通算できる所得は限られている、という前提をまず押さえてください。
還付は「先取りされた税の払い戻し」に過ぎない
ここで初心者が誤解しやすい点を補足します。損益通算で戻ってくる18万円は、国からもらえるボーナスではありません。あくまで源泉徴収で先に多く納めていた税金の払い戻しです。つまり、不動産所得で90万円のキャッシュが実際に減っていて、そのうち税率相当分の18万円が戻る、という関係です。仮に現金が出ていかない減価償却で赤字を作った場合は「実際の支出なしに18万円戻る」ため得ですが、修繕費のように現金が実際に出ていく赤字なら「90万円払って18万円戻る」ので、差引72万円は自腹です。私は駆け出しの頃「還付されるから修繕はどんどんやった方が得」と考えて過剰に工事を発注しかけましたが、還付率は自分の税率(20%なら2割)でしかない、と気づいて発注基準を見直しました。節税を目的に不要な支出をするのは、財布の穴を大きくして一部だけ塞ぐようなものです。
💡 判断のポイント
損益通算による還付額は「赤字額×自分の限界税率」でおおよそ見積もれます。給与が高く税率区分が上(23%・33%)の人ほど1円の赤字が生む還付インパクトが大きい。逆に税率5〜10%の層は、赤字を作るために無理な支出をしても回収効率が悪いことがあります。まず自分の課税所得がどの税率区分にあるかを確認するのが、あらゆる節税判断の出発点です。
土地取得の借入金利子は損益通算できない
ここが本記事で最も強調したい論点です。不動産所得が赤字のとき、その赤字の中に「土地を取得するために借りたお金の利子」が含まれている場合、その利子部分は損益通算の対象から除外されます。建物の取得にかかる利子は対象、土地の取得にかかる利子は対象外。この線引きを知らないと、還付を過大に見積もって資金計画が狂います。
なぜ土地利子だけ除外されるのか
土地は減価償却できない資産で、時間が経っても価値が減らない(建前上)。その土地を借入で買って利子を経費にし、赤字を作って給与と通算する――という節税だけを目的にした取引を抑制するために設けられた規定だと理解しています。仕組みとして、まず建物と土地それぞれの取得価額を確定させ、借入金がどちらに充てられたかを整理する必要があります。実務では、購入価格の総額のうち建物・土地の内訳を売買契約書や固定資産税評価額の比率などで按分し、借入金も同じ考え方で建物分・土地分に割り付けます。
按分計算を実額でやってみる
私が保有する築古アパートの一つを単純化した数字で説明します。土地建物総額3,000万円、うち建物1,200万円・土地1,800万円(建物40%・土地60%)。全額を金利2%で借入し、年間の支払利子が60万円だったとします。この60万円のうち、建物分は60万円×40%=24万円、土地分は60万円×60%=36万円です。
| 項目 | 金額 | 損益通算の扱い |
|---|---|---|
| 支払利子 総額 | 60万円 | 経費計上は可 |
| うち建物分(40%) | 24万円 | 赤字なら通算可 |
| うち土地分(60%) | 36万円 | 赤字のうちこの分は通算不可 |
仮に不動産所得の赤字が全体で50万円だったとします。この赤字の中に土地利子36万円が含まれているなら、給与と通算できる赤字は50万円−36万円=14万円に縮小します。ここを誤ると、50万円の赤字で還付を計算し「10万円戻るはず」と思っていたら実際は3万円程度、という差が生まれます。逆に、不動産所得が黒字の年や、赤字が土地利子より小さい年は調整の考え方が変わるため、赤字額と土地利子額の大小関係を毎年確認する癖をつけてください。
⚠️ 失敗談
私は2棟目を土地値の高いエリアで買ったとき、この土地利子の除外を計算に入れず、初年度の還付を丼勘定で見積もっていました。実際に確定申告してみると、想定していた還付額より7万円ほど少なかった。金額としては致命傷ではありませんでしたが、その7万円を次の物件の修繕予備費に充てるつもりだったので、資金繰りの読みが狂いました。以来、物件を検討する段階で建物・土地の内訳と借入の按分を先に試算するようにしています。
初年度に赤字が出やすい理由と一括経費
不動産投資の初年度に赤字が出やすいのは、購入時にだけ発生する費用がまとまって経費になるからです。これらは翌年以降は原則発生しないので、初年度だけ経費が膨らみ、家賃収入を上回って赤字になりやすい。代表的なものを整理します。
初年度限定でかかる主な費用
私の経験で初年度に計上した主な項目は次のとおりです。金額は物件規模で変わりますが、築古アパート1棟で数十万円単位になります。
| 費用項目 | 目安額 | 経費の扱い |
|---|---|---|
| 登記費用(登録免許税・司法書士報酬) | 15万〜40万円 | その年の経費に一括 |
| 不動産取得税 | 10万〜30万円 | 課税された年の経費に一括 |
| ローン事務手数料・保証料 | 数万〜数十万円 | 一括経費または期間按分 |
| 火災保険料(数年一括払い) | 5万〜20万円 | 保険期間で按分 |
一括か按分かで初年度の赤字幅が変わる
ここで機械設計者らしい定量比較をします。ローン事務手数料や保証料は、一括で経費にできるものと、借入期間にわたって按分するものが混在します。たとえば保証料30万円を初年度に全額経費化できれば初年度の赤字が30万円厚くなり、その分還付も増えます。一方で20年ローンにわたって按分するタイプなら初年度は1.5万円しか落ちません。不動産取得税は物件取得後しばらくして納税通知が届くため、初年度ではなく2年目に費用計上されるケースもあります。つまり「初年度にどこまで赤字を厚くできるか」は費用の性質と計上タイミングで決まります。私は物件ごとに、購入時費用を「初年度一括」「期間按分」「取得価額に算入して減価償却」の3分類に仕分けたエクセルを作り、初年度の想定赤字と還付を先に計算してから融資を申し込むようにしています。
取得価額に含めるか経費にするかの分岐
費用の中には、経費にせず建物の取得価額に含める(=資産計上して減価償却する)ものもあります。仲介手数料などは取得価額に算入するのが原則です。取得価額に含めれば初年度の赤字は小さくなりますが、その後何年もかけて償却費として経費化されます。初年度に大きく還付を取りたいのか、長期で平準化したいのかで扱いが分かれるため、この分岐は税理士と相談して決めるのが安全です。私は物件取得時、司法書士や仲介業者から受け取る精算書の各項目に「経費/取得価額」の色分け付箋を貼り、判断に迷った項目だけを税理士に一括で質問するようにしています。設計図面のレビューと同じで、疑問点を潰してから清書に入る方が、後の修正コストが圧倒的に小さいからです。
減価償却で意図的に赤字を作る戦略とその反動
初年度費用は一度きりですが、毎年継続して赤字を生み出せる装置が減価償却です。特に築古物件は建物の法定耐用年数を過ぎている、または残存年数が短いため、短期間で大きな償却費を計上できます。木造の法定耐用年数は22年で、耐用年数を超えた中古建物は「22年×20%」で4年(端数切捨て)という簡便な計算が使えるのが実務上よく知られた点です。建物価額を4年で割ると、毎年の償却費は非常に大きくなり、家賃収入を上回って毎年赤字を作れます。
4年償却の数字とインパクト
私が保有する築古木造アパートを例にします。建物価額1,000万円を4年で償却すると、毎年250万円の減価償却費です。家賃収入が年180万円、他の経費が年60万円だとすると、不動産所得は180万円−60万円−250万円=マイナス130万円。この130万円(土地利子除外後)を給与と通算すれば、税率20%の人で年26万円前後の税軽減が4年続きます。4年で約100万円のキャッシュメリットです。これは減価償却という「お金が出ていかない経費」を使うからこそ成立します。
⚠️ 失敗談
私はこの4年償却の威力に気を良くして、償却が終わる5年目のことを深く考えていませんでした。5年目、償却費250万円がゼロになった瞬間、同じ家賃・同じ経費でも不動産所得は一気に黒字化し、逆に120万円の課税所得が乗ってきました。還付が消えるどころか納税額が増える。しかも売却時には、償却で減った簿価に対して売却益が計算されるため、譲渡所得税として後から回収される面もあります。減価償却は税を消すのではなく「先送りしている」だけの側面がある、と痛感しました。
持続可能性をどう判断するか
減価償却で赤字を作る戦略は、償却期間中の税メリットと、償却終了後・売却時の反動をセットで評価しないと意味がありません。判断軸を私はこう置いています。第一に、償却が切れる年に他の物件の初期費用や大規模修繕を重ねて赤字を継続できるか。第二に、償却期間中に得た還付を再投資に回して次の償却資産を確保できているか。第三に、出口(売却)の譲渡所得税まで含めたトータルで手残りが増えるか。単年の還付額だけを見て「毎年戻ってくる」と喜ぶのは危険で、償却が生む赤字は時限装置だと考えるべきです。
もう一つ、機械設計で言う「疲労寿命」に似た視点を付け加えます。短期償却で毎年130万円の赤字を作れる4年間は確かに魅力的ですが、その4年で得た約100万円の還付を消費に回してしまうと、5年目の課税増と手元資金の枯渇が同時に来ます。私は償却メリットの出た年は、還付相当額を「次の物件の頭金」または「大規模修繕の積立」として別口座に隔離し、生活費と混ぜないルールにしています。設計部品に安全率を掛けるのと同じで、税メリットにも使い道の枠を先に決めておかないと、いざ反動が来たときに耐えられません。減価償却は上手に使えば強力な武器ですが、使い方を誤ると4年後に自分の首を絞める――この両面を必ず天秤にかけてください。
通算しきれない純損失は青色なら3年繰り越せる
赤字が大きすぎて、その年の給与所得などと通算してもなお相殺しきれない金額が残ることがあります。この残った赤字を「純損失」と呼びます。青色申告をしていれば、この純損失を翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の黒字と相殺できます。白色申告では、原則この繰越はできません。ここが青色申告を選ぶ大きな理由の一つです。
繰越の具体例
大規模修繕を行った年を想定します。私の物件で屋根・外壁・給排水をまとめて更新した年、経費が跳ね上がって不動産所得が200万円の赤字になったことがあります。その年の給与所得と通算した後もなお純損失が80万円残ったとします。青色なら、この80万円を翌年に繰り越します。翌年、不動産所得が60万円の黒字なら、繰り越した80万円のうち60万円を充てて黒字をゼロにし、まだ残る20万円をさらに翌々年へ繰り越せます。結果として、大規模修繕の赤字を単年で捨てずに、複数年の黒字にわたって使い切れるわけです。
青色申告のもう一つの効用
青色申告は純損失の繰越だけでなく、事業的規模(おおむね5棟10室基準)を満たせば青色申告特別控除が使える、家族への給与を経費にできるなどの利点もあります。私は物件が増えて事業的規模に達した段階で、記帳を複式簿記に切り替えました。手間は増えますが、繰越と特別控除を合わせた効果は、私の年間で数十万円規模になっています。開業から一定期間内に青色申告の届出を出さないと当年から適用できないため、始める段階で税理士に相談して届出期限を押さえておくことをすすめます。
💡 判断のポイント
大規模修繕を「いつやるか」は、キャッシュフローだけでなく損益通算・繰越の観点でも設計できます。給与所得が高く税率区分が上の年に修繕を集中させれば、通算による還付効率が上がる。逆に退職などで給与が下がる予定の前年までに赤字を出しておく、といった時間軸の設計が可能です。工事のDIYで費用を圧縮しつつ、計上する年を選ぶ――この2軸を合わせると、同じ修繕でも手残りが変わります。
年末調整済みでも確定申告で追加還付を受ける手順
会社員は年末調整で所得税が精算されますが、損益通算は年末調整では処理できません。不動産所得の赤字を給与と通算して還付を受けるには、自分で確定申告をする必要があります。年末調整が済んでいても、確定申告をやり直す(上書きする)ことで追加の還付が受けられる、と理解してください。申告期間は原則として翌年2月16日から3月15日ですが、還付申告は年明けから提出できます。
必要書類のチェックリスト
私が毎年準備している書類を、機械設計の部品表のように一覧化しておきます。抜けると手戻りが大きい順に並べました。
| 書類 | 用途 |
|---|---|
| 源泉徴収票(勤務先) | 給与所得と源泉徴収税額の確定 |
| 不動産所得の収支内訳書または青色決算書 | 家賃収入と経費の集計 |
| 借入金の年末残高証明・返済予定表 | 支払利子と土地建物按分の根拠 |
| 売買契約書・重要事項説明書 | 建物土地の内訳・取得価額 |
| 各種領収書(修繕費・管理費・保険料など) | 経費の証憑 |
| 還付金振込先の口座情報 | 還付金の受取 |
申告の流れと注意点
手順としては、まず不動産所得の収支を集計して赤字額を確定し、そこから土地利子の除外分を調整します。次に給与所得と損益通算し、繰り越す純損失があれば繰越額を計算します。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、源泉徴収票と収支の数字を入力するだけで還付額が自動計算されます。私は初年度こそ税務署の相談窓口に書類一式を持ち込みましたが、2年目以降はオンラインで完結しています。注意点として、住民税は確定申告のデータが自治体に連携され、翌年度の住民税に反映されます。また、還付が発生する年は問題になりにくいものの、記帳や証憑の保存義務は残ります。領収書は物件ごと・年ごとにファイリングし、私は最低でも法定の保存期間は捨てずに保管しています。
還付を早く・確実に受けるコツ
実務的なコツを3つ挙げます。第一に、還付申告は年明け1月から提出できるため、2〜3月の混雑期を避けて早めに出すと、還付金の振込も早い傾向があります。私の場合、1月中旬に提出した年は2月上旬には口座に入金されました。第二に、按分計算や減価償却の計算根拠は、確定申告書とは別に自分用の計算メモを残しておくこと。翌年、前年と同じ計算方法を踏襲できますし、万一の問い合わせにも即答できます。第三に、収支内訳書や決算書の経費科目は、家事按分(自宅兼用の通信費・車両費など)の割合を毎年一定のルールで決めておくこと。恣意的に割合を変えると説明がつかなくなります。私は物件管理に使うスマホ料金の3割、車両費の2割を事業按分と決め、根拠(現地確認や資材運搬の頻度)を1枚のメモに残しています。数字の裏付けを常に用意しておく――これは設計計算書を残すのと同じ発想です。
赤字が続くと融資審査・住宅ローンに響く実務リスク
ここまで赤字と還付のメリットを書いてきましたが、最後に必ず釘を刺しておきたいのがこのリスクです。不動産所得の赤字を給与と通算して還付を受けるということは、確定申告書や納税証明書の上で「あなたの合計所得が赤字によって下がっている」状態を作るということでもあります。金融機関は融資審査でこの合計所得や不動産事業の損益を見ます。節税のために赤字を出し続けると、次の物件を買うための融資や、マイホームの住宅ローン審査で不利に働くことがあるのです。
私が直面した審査の壁
減価償却で不動産所得を大きく赤字にしていた時期、私は3棟目の融資を申し込みました。担当者から「事業の実態として利益が出ているのか」を確認され、償却前の営業キャッシュフロー(償却費を足し戻した実際の手残り)を資料で説明する羽目になりました。会計上は赤字でも、減価償却という現金支出のない経費で赤字になっているだけで、実際は毎月現金が残っている――これを数字で示せたので融資は通りましたが、説明できなければ審査は厳しかったはずです。決算上の赤字と、実際のキャッシュフローの黒字は別物だということを、貸し手にきちんと伝えられる準備が要ります。
節税と与信のトレードオフをどう設計するか
判断軸として、私は「今後2〜3年以内に住宅ローンや追加の投資融資を組む予定があるか」を必ず確認します。予定があるなら、その時期は過度に赤字を作りにいかない。逆に、当面借入の予定がなく手元のキャッシュフローに余裕があるなら、減価償却を効かせて還付を最大化する。節税(税の圧縮)と与信(借りられる力の維持)は、しばしば逆を向くトレードオフです。DIYで工事費を1/5に抑えて手残りを厚くしても、決算を赤字にしすぎて次が買えなくなっては本末転倒になりかねません。会計上の見た目と、金融機関に説明できる実質のキャッシュフローの両方を意識してください。
💡 判断のポイント
融資審査対策として、私は毎年「償却前キャッシュフロー計算書」を1枚にまとめています。家賃収入から実際の現金支出(返済元本・利子・修繕・管理費など)だけを引いた実質手残りを示す資料です。会計上の赤字とは別に、この1枚があると金融機関との対話が格段にスムーズになります。数字で語れる状態を常に作っておくことが、大家としての与信を守る最も確実な方法だと考えています。
まとめ:損益通算は使う技術より外さない技術
サラリーマン大家の損益通算は、初年度費用や減価償却で作った不動産所得の赤字を給与所得と相殺し、源泉徴収税を還付させる強力な仕組みです。私の初年度は90万円の赤字で約27万円のキャッシュメリットがありました。ただし、土地取得の借入金利子は損益通算できないという規定を外すと還付を過大に見積もり、資金計画が狂います。初年度費用は「一括経費・期間按分・取得価額算入」の3分類で仕分け、初年度の赤字幅と還付を先に試算する。減価償却で作る赤字は償却終了後と売却時の反動まで含めて評価する時限装置です。通算しきれない純損失は青色なら3年繰り越せるので、大規模修繕の赤字を捨てずに使い切る。年末調整済みでも確定申告で還付は受けられますが、源泉徴収票・借入残高証明・売買契約書などの書類を部品表のように揃えることが手戻りを防ぎます。そして最も忘れてはならないのが、赤字を続けると融資審査や住宅ローンに響くという実務リスク。償却前キャッシュフローを1枚で示せる準備をして、節税と与信のトレードオフを設計してください。工事はやり直せても税は年をまたぐと取り返しがつきにくい。だからこそ損益通算は「いかに使うか」以上に「いかに外さないか」の技術だと、私は15年の実務で学びました。制度の細部や個別適用は2026年時点でも改正や解釈の余地があるため、最終判断は必ず税理士等の専門家に確認したうえで進めることをおすすめします。
📚 大家のリアル シリーズ
📄 確定申告、毎年自分で全部やる必要はありません
経費区分や減価償却の判断に時間を取られるくらいなら、税理士に任せた方が結果的に手残りが増えることもあります。【ベンチャーライフ】の税理士紹介は決算料0円プランの相談も可能です。







