空室を埋めるとき、家賃をいくらに設定するか――これは大家にとって最も悩ましい判断のひとつです。高く設定すれば収益は増えますが、決まらず空室が長引けば本末転倒。安くすれば早く決まりますが、本来取れたはずの家賃を捨てることになります。この「適正家賃」を勘や希望で決めてはいけません。答えは、SUUMOやアットホームに載っている「競合物件」の中にあります。私は15年大家をやってきて、家賃を決めるときは必ず競合調査をします。この記事では、SUUMO・アットホームを使った競合物件調査の具体的な手順と、それをもとに家賃を最適化する方法を解説します。
なぜ「希望家賃」ではなく「市場家賃」で決めるべきか
大家が家賃を決めるとき、つい「ローン返済がこれだけあるから、最低この家賃は欲しい」と、自分の都合(希望家賃)で考えがちです。私も最初はそうでした。しかし、入居者はあなたのローン事情など知りませんし、関係ありません。入居者が見るのは「同じエリア・同じ条件の他の物件と比べて、この家賃は妥当か」だけです。つまり、家賃は市場(競合物件)が決めるものであって、大家の希望で決まるものではないのです。
市場より高ければ、どれだけ待っても決まりません。空室1ヶ月の損失は、家賃そのものの全額です。たとえば家賃6万円の部屋を「7万円で貸したい」と強気で設定し、3ヶ月空室にすれば18万円の損失。一方、適正家賃の6万円で即決していれば損失はゼロ。「強気の家賃で空室3ヶ月」より「適正家賃で即決」のほうが、トータルの収入は圧倒的に多い。この当たり前の事実を、競合調査を通じて数字で確認することが、家賃設定の出発点です。
SUUMO・アットホームでの競合物件の探し方
競合調査の基本ツールは、入居者が実際に物件を探すのと同じ、SUUMOとアットホームです。なぜこの2つかというと、入居者の多くがこのポータルサイトで物件を比較しているからです。「入居者と同じ目線で、同じ画面を見る」ことが、リアルな競合状況をつかむコツです。具体的な検索手順は次の通りです。
- STEP1:自分の物件と同じ「最寄り駅」または「市区町村・エリア」で検索する。
- STEP2:間取り(1K、1LDK、2DKなど)を自分の物件と揃える。
- STEP3:駅からの距離(徒歩○分)を近い範囲で絞る。
- STEP4:専有面積を自分の物件±5㎡程度で絞る。
- STEP5:表示された物件を家賃の安い順に並べ替える。
こうして絞り込むと、「あなたの物件と本当に競合する物件」だけが10〜30件ほど表示されます。これが入居者があなたの物件と天秤にかける相手です。間取りや面積、駅距離がバラバラなまま「平均家賃」を見ても意味がありません。条件をできる限り揃えて、初めて意味のある比較になる。ここを丁寧にやるかどうかで、調査の精度が大きく変わります。
調査データを表にまとめて「相場帯」を可視化する
競合物件を見つけたら、その情報を表にまとめます。頭の中で「だいたいこれくらい」と考えるのではなく、必ず書き出すこと。書き出すことで初めて、自分の物件がどのポジションにいるかが客観的に見えてきます。私が記録する項目は次の通りです。
| 記録項目 | チェックの観点 |
|---|---|
| 家賃・共益費 | 総額(家賃+共益費)で比較する |
| 専有面積・間取り | 1㎡あたりの単価も計算する |
| 駅徒歩・築年数 | 立地と古さのハンデを把握 |
| 設備(エアコン・独立洗面・宅配BOX等) | 自分の物件との差を確認 |
| 敷金礼金・フリーレント・AD | 初期費用条件の競争力 |
10〜20件分を表にすると、「このエリア・この間取りの相場は5.8万〜6.5万円」という相場帯がはっきり見えてきます。私はこの相場帯の中で、自分の物件の設備・築年数・立地が上位なのか下位なのかを判断し、家賃のポジションを決めます。設備が充実していれば相場帯の上限近く、築古で設備が劣るなら下限近く、という具合です。勘ではなく、データに基づいた「根拠のある家賃」を出せるようになります。
「掲載されている」と「決まっている」は違う――滞留物件の見抜き方
競合調査で見落としがちな重要ポイントが、「掲載されている家賃」が必ずしも「実際に決まる家賃」ではないという点です。SUUMOに6.5万円で載っている物件があっても、それが3ヶ月売れ残っているなら、その家賃は「決まらない高すぎる家賃」かもしれません。逆に、掲載してすぐ消える物件の家賃は「適正で人気の家賃」です。
滞留物件(売れ残り)を見抜くには、定期的に同じ条件で検索し、どの物件が残り続けているかを観察します。私は週1回、自分のエリアの競合を見て、「先週も載っていた物件」をチェックします。長く残っている物件の家賃は、市場が「高い」と判断している証拠。逆に、すぐ消える価格帯が「決まる家賃」です。掲載価格の平均ではなく、『すぐ決まる価格帯』を狙うのが、空室を最速で埋めるコツです。仲介業者に「この家賃で何件くらい問い合わせが来ますか」と聞くのも有効な裏取りになります。
家賃を下げずに競争力を上げる「条件」の調整
競合調査の結果、自分の物件が相場より高いと分かったとき、安易に家賃そのものを下げるのは最後の手段にすべきです。なぜなら、一度下げた家賃を上げるのは難しく、その家賃が以後ずっと続くからです。家賃を下げる前に検討すべきなのが「条件」の調整です。具体的には次のような手があります。
- 礼金ゼロ・敷金ゼロ:入居者の初期費用を下げ、申込のハードルを下げる。
- フリーレント1ヶ月:最初の1ヶ月家賃無料。実質1ヶ月分の値引きだが、表面家賃は維持できる。
- 設備の追加:エアコン・宅配ボックス・無料インターネットなどを付けて付加価値を上げる。
- 仲介業者へのAD増額:家賃を下げる代わりに、業者の紹介意欲を高める。
特に効くのがフリーレントです。たとえば家賃6万円を5.5万円に下げると、以後ずっと年6万円(5,000円×12)の減収が続きます。一方、フリーレント1ヶ月なら、その年だけ6万円の減収で済み、翌年からは満額に戻ります。表面家賃を維持しながら実質的に競争力を持たせる――この発想が、長期の収益を守ります。競合調査で家賃のポジションを把握したうえで、まずは条件で勝負する。それが私の基本戦略です。
調査の頻度とタイミング――いつ調べるべきか
競合調査は一度やって終わりではありません。賃貸市場は季節や時期で大きく動くため、定期的に状況を確認する必要があります。私が競合調査をするタイミングは次の通りです。
第一に、退去予告が来たとき。退去が決まったら、すぐに最新の競合状況を調べ、次の募集家賃を決めます。前回の入居時から相場が変わっていることも多いからです。第二に、繁忙期前(11〜12月)。1〜3月の繁忙期に向けて、最も需要が高まる時期の相場を把握しておきます。第三に、空室が長引いているとき。1ヶ月決まらなければ、必ず競合を見直し、自分の家賃や条件がズレていないかを検証します。
賃貸の繁忙期(1〜3月)は需要が多いので、相場よりやや強気でも決まります。逆に閑散期(夏場)は需要が少ないので、条件を有利にしないと決まりにくい。同じ物件でも、時期によって最適な家賃・条件は変わるのです。市場は生き物。定期的に競合を観察し、自分の物件のポジションを微調整し続けることが、空室を最小化し収益を最大化する王道です。
まとめ:家賃は「データ」で決める
競合物件調査と家賃最適化について整理します。①家賃は希望ではなく市場(競合)が決める。②SUUMO・アットホームで、駅・間取り・面積・駅距離を揃えて競合を絞り込む。③調査データを表にして相場帯を可視化し、自分の物件のポジションを判断する。④掲載価格ではなく「すぐ決まる価格帯」を狙う。⑤家賃を下げる前に礼金ゼロ・フリーレント・設備追加で競争力を上げる。⑥退去予告時・繁忙期前・空室長期化時に定期的に調査する。
家賃設定を勘や希望で決めている大家は、必ずどこかで損をしています。SUUMOやアットホームを開けば、その答えは無料で目の前にあります。入居者と同じ画面を見て、データで家賃を決める――この習慣を持つだけで、空室期間と収益は確実に改善します。次の募集の前に、ぜひ競合調査を実践してみてください。
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