築古アパートを買うかどうか判断するとき、ほとんどの人がまず「表面利回り」を見る。販売資料に大きく書いてある「12.0%」「14.5%」という数字だ。だが、その数字は実際の手取り収益とは大きく違う。
DIY父さんは8棟の中古アパートを購入してきたが、購入時に表面利回り10%を超えていた物件で、実際の手取り利回り(実質利回り)が6%を下回ったケースが3棟ある。差は4ポイント。月収にして約8万円、年間で96万円の誤算だ。
この記事では、表面利回りと実質利回りの差がなぜ生まれるのか、見落としやすい「3つの落とし穴」を具体的な数字とともに解説する。物件購入を検討している人にとって、買ってから後悔しないための必読チェックポイントだ。
表面利回りと実質利回りの違いを30秒で理解する
まず基本の定義から整理する。
表面利回り(グロス利回り) = 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
例:物件価格3,000万円、年間家賃収入360万円なら → 12.0%
実質利回り(ネット利回り) = (年間家賃収入 − 年間経費)÷(物件価格 + 購入時諸費用)× 100
例:年間経費90万円、購入時諸費用200万円なら → (360-90)÷(3000+200) = 8.4%
計算式を見ると分かるが、実質利回りは「年間経費」と「購入時諸費用」を含めて計算する。この2つを正確に見積もれるかが、購入判断の精度を決める。
そして、落とし穴はこの「年間経費」の中に潜んでいる。多くの人が見落とす3つの項目を順に解説する。
落とし穴1|固定資産税・都市計画税の見落とし
最初の落とし穴は、固定資産税と都市計画税だ。「税金くらい知ってる」と思うかもしれないが、購入前に正確な金額を把握している人は意外と少ない。
販売資料には載っていないことが多い
築古アパートの販売資料を10件以上見てきたが、固定資産税の概算が記載されていたのは半数以下だった。記載があっても「年額〇〇万円程度」とアバウトな表現で、実際の納税通知書を確認しないと正確な金額は分からない。
DIY父さんの3棟目で、販売資料には「固定資産税12万円程度」と書いてあったが、購入後に届いた納税通知書は18万円だった。差額の6万円は決して小さくない。年間家賃360万円の物件で、利回りに換算すると0.2ポイント分の差だ。
築古でも土地評価額は高いことがある
建物部分の評価額は築年数とともに下がるが、土地の評価額は逆に上がっている地域もある。特に駅近・市街地の物件は、土地の固定資産税が想像以上に高いことがある。
購入前に必ず売主または仲介業者に「直近の納税通知書のコピー」を要求するべきだ。これを断る業者の物件は、それ自体が黄信号だと考えていい。
落とし穴2|修繕費・原状回復費の過小評価
2つ目の落とし穴が、修繕費と原状回復費だ。これが実質利回りに最も大きく影響する項目で、見積もりが甘いと実質利回りが2〜3ポイント簡単に下がる。
築古アパートの「平均的な」修繕費
築20年以上の木造アパートを保有してきた経験から、年間の修繕費は家賃収入の8〜12%を見ておくのが現実的だ。年間家賃360万円なら、修繕費は年間29〜43万円。これを見ていない計算は楽観的すぎる。
内訳の目安:
| 項目 | 年間頻度 | 1回あたり費用 |
|---|---|---|
| 給湯器交換 | 5〜10年に1回 | 15〜25万円 |
| エアコン交換 | 8〜10年に1回 | 8〜12万円 |
| 外壁塗装 | 12〜15年に1回 | 80〜200万円 |
| 屋根防水・補修 | 10〜15年に1回 | 30〜80万円 |
| 給排水管修繕 | 突発的 | 5〜30万円 |
| 退去時原状回復 | 入居者退去ごと | 8〜25万円 |
これらの「いつかは必ず来る」費用を、年単位の積立として計算に含めていないと、ある年に突発的に大きな出費が発生して赤字になる。
築古=「次の大規模修繕までの残り年数」で考える
築20年で外壁塗装をしていなければ、今後数年以内に最低80万円の出費が確実に来る。これを購入時の判断に含めないと、買った瞬間に「赤字スタート」になる。築古物件を見るときは、必ず「次に来る大規模修繕までの猶予年数」を確認するべきだ。
落とし穴3|空室率を「平均値」で見るリスク
3つ目の落とし穴は空室率だ。販売資料には「想定空室率5%」「地域平均空室率10%」といった数字が載っているが、これをそのまま自分の物件に当てはめるのは危険だ。
「平均空室率10%」の本当の意味
空室率10%という数字は、年間で12ヶ月のうち1.2ヶ月空室になる、という単純計算ではない。実際の現場では「3ヶ月空室→3ヶ月満室」が繰り返される偏った分布になることが多い。
たとえば4部屋のアパートで1部屋が4ヶ月空室、残り3部屋が満室なら、空室率は約8%だ。だが、その4ヶ月の家賃ロスは家賃8万円×4ヶ月=32万円。年間家賃384万円の物件で、利回りに換算すると0.8ポイント分の打撃になる。
「客付けに強い物件か」で空室期間が決まる
同じ地域・同じ家賃帯でも、空室期間は物件によって大きく違う。最寄り駅から徒歩何分か、設備(エアコン・追い焚き・独立洗面)の有無、内装の状態、ペット可・楽器可などの条件で、空室期間は3倍以上違うことがある。
購入前に必ず周辺の競合物件をSUUMOやat homeで検索し、自分の物件が「客付けの強さ」で上位3割に入るかを確認するべきだ。下位7割に入る物件は、想定よりも空室率が高くなる可能性が高い。
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DIY父さん実例:表面12% → 実質6.3% への落差
具体例として、DIY父さんが3棟目に購入した木造アパート(築25年・4戸・地方都市)の実数値を公開する。
| 項目 | 金額/率 |
|---|---|
| 物件価格 | 2,500万円 |
| 年間想定家賃収入(満室時) | 300万円 |
| 表面利回り | 12.0% |
| 購入時諸費用(仲介手数料・登記等) | +200万円 |
| 固定資産税・都市計画税(年) | −16万円 |
| 修繕費・原状回復(年平均) | −36万円 |
| 管理委託費(5%) | −15万円 |
| 火災保険(年) | −4万円 |
| 空室損失(実績13%) | −39万円 |
| 年間ネット収益 | 170万円 |
| 実質利回り | 6.3% |
表面12.0%が、実質6.3%。差は5.7ポイント。月収ベースだと約14万円の差だ。この物件を「12%だから優良」と判断して買っていたら、想定の半分しか手元に残らないことになる。
実際にはこの物件、DIYで原状回復費を半分にカット、管理を一部自主管理に切り替えたことで、現在の実質利回りは8.2%まで改善した。それでも表面利回りには遠く及ばない。「築古アパートを買う」とは、こうした実態を理解した上で判断する必要がある。
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実質利回りを正確に見抜くチェックリスト
最後に、購入判断の前に必ず確認すべき10項目をまとめる。これをクリアできない物件は、表面利回りがどれだけ高くても見送るべきだ。
- 固定資産税・都市計画税の直近納税通知書を売主から入手したか
- 過去3年間の修繕履歴(外壁・屋根・給湯器・配管)を確認したか
- 次の大規模修繕までの年数を見積もったか(特に外壁・屋根)
- 近隣の競合物件の家賃相場をSUUMO・at homeで確認したか
- 過去2〜3年の空室期間の実績を売主または管理会社に確認したか
- 購入時諸費用(仲介手数料・登記費用・不動産取得税)を物件価格の7〜8%で見積もったか
- 管理委託費(家賃の5〜7%)を計算に入れているか
- 火災保険料を概算で年間家賃の1〜2%として見ているか
- 退去時原状回復費を1戸あたり年間2〜5万円の積立として計算したか
- ローン返済額が年間家賃の50%以下に収まるか
この10項目をクリアして、実質利回りが6%以上残るなら、買って良い物件と判断できる。逆に1つでも欠けるなら、購入後に必ず想定外の支出が発生する。
まとめ|数字を疑う習慣が大家を守る
築古アパート投資の世界では、「表面利回り12%」「築古お宝物件」といった魅力的な言葉が飛び交う。だがその数字を鵜呑みにすると、買ってから「想定と違った」と後悔することになる。
大事なのは、販売資料に書かれた数字を疑い、自分で実質利回りを計算する習慣だ。固定資産税、修繕費、空室損失──この3つを正しく見積もるだけで、実質利回りの精度は大幅に上がる。
DIY父さんも最初の3棟は「表面利回り信仰」で買って痛い目を見た。今は購入判断時に必ず実質利回り6%以上をクリアできることを確認している。これだけで購入後の失敗は劇的に減った。
これから物件を買う人は、この記事のチェックリストをぜひ活用してほしい。
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