大家が陥りやすい「資金の混在」という罠
大家業を始めた多くの人が犯す失敗のひとつが、賃貸収入と生活費・投資資金を同じ口座で管理してしまうことです。私もこの失敗を経験しました。賃貸収入が入ってくる口座から修繕費を出し、生活費も出し、次の物件の頭金も積み立て——あっという間に「今いくらあるか」がわからなくなり、急な修繕が入った際に「あれ、お金が足りない」という事態になりました。
資金管理の基本は「目的別に口座を分ける」ことです。大家業を長く続けるためには、少なくとも3つの資金プールを明確に分離して管理する必要があります。本記事では、私が実践している「修繕用・購入用・運転資金」の3分割管理法を、具体的な金額設定とともに公開します。
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大家の資金を3つに分ける理由
なぜ資金を3つに分けるのかを、まず理由から説明します。目的が違う資金を混在させると以下の問題が起きます。
- 修繕費が足りなくなる:物件の修繕は突発的に発生する。修繕資金が別枠で確保されていないと、急な修繕で生活費や投資資金に手をつけることになる
- 投資チャンスを逃す:良い物件が見つかったときに「頭金をすぐ出せる状態」になっていない。他の用途で使ってしまっていて購入機会を逃す
- キャッシュフローが見えない:全部混在していると「不動産業の実際の収支」が計算できず、税務・経営判断が難しくなる
- 感情的な使いすぎ:収入が口座に溜まっていると「つい使ってしまう」という誘惑に勝てなくなる。分けることで「この口座のお金は使えない」という心理的なブレーキができる
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3つの資金プール:それぞれの目的と目標残高
私が管理している3つの資金プールの詳細を公開します。
| 資金プール | 目的 | 目標残高(私の場合) | 積立方法 |
|---|---|---|---|
| 修繕積立口座 | 突発修繕・計画修繕の費用 | 300〜500万円 | 家賃収入の10%を毎月自動振替 |
| 購入積立口座 | 次の物件取得の頭金・諸費用 | 目標購入価格の30% | 家賃収入の15〜20%を毎月積立 |
| 運転資金口座 | 家賃収入・ローン返済・管理費の管理 | 月額固定費の3ヶ月分 | 家賃収入の入金口座として使用 |
私の場合、5棟・18室で月収約160万円(家賃収入)に対して、毎月の資金配分はざっくり以下のようになっています。修繕積立16万円(10%)、購入積立25万円(約15%)、ローン返済・管理費・固定費等約100万円、税引き前純利益・生活費等約19万円。この配分を崩さないことが、長期的な大家業の安定に直結しています。
修繕積立口座の管理:いくら積めばいいか
修繕積立の目標残高は「保有物件の規模・築年数・設備数」によって変わります。私が使っている目安の計算式を公開します。
計算式:月額修繕積立 = 年間家賃収入 × 10% ÷ 12ヶ月
例:年間家賃収入1000万円の場合 → 月83,000円の積立
ただし築古物件(築30年以上)や設備の多い物件(エレベーター・駐車場設備等)は12〜15%に引き上げることをすすめます。修繕積立の目標残高は「少なくとも外壁塗装1棟分が賄える金額」を目安にしています。木造2階建て・6戸のアパートなら、外壁塗装は約150〜250万円が相場のため、300万円程度を常に維持することを目標にしています。
購入積立口座の使い方:次の物件を「待てる状態」を作る
次の物件を取得するためには、事前に「すぐ使える頭金」が必要です。購入積立口座の目標残高は「購入したい物件価格帯の25〜30%」です。
例えば「3000万円の物件を次の物件として検討している」なら、頭金750〜900万円が必要です。さらに購入諸費用(仲介手数料・登記費用・取得税等)が物件価格の7〜10%かかるため、合計約1050〜1200万円を購入積立口座に確保していることが理想です。
なぜ「30%」なのかというと、フルローン(100%融資)を避けるためです。購入資金の20〜30%を自己資金として出すことで、融資審査の通過率が上がり、金利交渉でも有利になります。「お金が貯まったら買う」ではなく「積立口座が目標残高に達したら動く」というルールにすることで、衝動買いを防ぐ効果もあります。
運転資金口座:空室・修繕の緊急時に揺れない安全圏
運転資金口座は「日常の家賃収入と支出を管理する口座」です。この口座の最低残高(安全圏)は「月額固定費の3ヶ月分」が私の基準です。
月額固定費の内訳例(5棟規模の場合):
- ローン返済合計:75万円
- 管理委託費:12万円
- 火災保険・固定資産税(月割):8万円
- その他運営費:5万円
- 合計:100万円
この規模なら運転資金口座の安全圏は300万円(100万円×3ヶ月)です。空室が増えて収入が落ちた場合も、最低3ヶ月間はこの安全圏から支出を補填できる状態を維持します。300万円を切ったら「空室対策の強化」や「修繕積立の一時停止」などの対策を発動するトリガーとしても使います。
法人と個人の資金分離:税務上の重要性
規模が大きくなると「法人化」を検討する大家も多いですが、法人と個人の資金分離も非常に重要です。法人口座(不動産管理会社)と個人口座を分離し、法人の収益は法人口座にのみ入金し、役員報酬以外は個人に移転しないことが原則です。
個人大家のうちは「事業用口座」と「生活費口座」を分けることが最低限の対策です。事業用口座に不動産収入を入金し、そこから事業費を出す。生活費は毎月一定額を事業用口座から生活費口座に「給与」のように移転する——このルーティンを守ることで、確定申告時の収支計算が格段にシンプルになります。
資金管理ツールの活用:スプレッドシートで見える化する
3つの口座の残高と毎月の収支を管理するには、Googleスプレッドシートが最も手軽で有効です。私が管理しているシートの構成を公開します。
- シート1:月次収支(家賃収入・各種支出・純収益)
- シート2:口座残高トラッキング(3口座の残高を毎月記録)
- シート3:修繕履歴(物件別・日付・費用・業者名)
- シート4:物件別損益(棟別の年間収支を一覧化)
- シート5:購入積立進捗(目標額vs現在残高の達成率)
このシートを毎月末に20〜30分で更新することで、全体の資金状況が一目でわかります。確定申告の時期にも、このシートがあれば税理士との打ち合わせが格段にスムーズになります。
物件購入判断の収支計算シート+使い方完全解説
本記事で紹介した「実質利回り計算」をワンクリックで自動化する Excelシート+判断基準をnoteで公開しています。実際に5棟以上の購入判断に使った完成版です。
まとめ:大家の資金管理3分割の原則
- 修繕用・購入用・運転資金の3口座を必ず分離する
- 修繕積立は家賃収入の10〜15%を毎月積立(築古は15%)
- 購入積立の目標は「購入検討価格帯の25〜30%」
- 運転資金は「月額固定費の3ヶ月分」が安全圏の最低ライン
- スプレッドシートで毎月資金状況を見える化する
資金管理は地味な作業ですが、大家業を10年・20年続けるための「縁の下の力持ち」です。この仕組みを作っていない大家と作っている大家では、5年後・10年後の資産規模に大きな差が生まれます。今日から口座の分離を始めてください。







