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借地権付き賃貸建物を売る・返す:地主との交渉、譲渡承諾料と借地権価格の実務

大家のリアル

借地の上に建てた賃貸建物を持つ大家の「出口」は、底地(所有権)の物件とは別物です。売るにも地主の承諾が要り、承諾料(名義書換料)として借地権価格のおおむね10%を支払うのが相場。私は大家歴15年で複数棟を保有し、そのうち古い1棟は旧法借地権の上に建つ木造アパートです。この物件の出口を検討する過程で、借地権価格の算定、借地非訟、建物買取請求権、地主への売り戻しまでを実務ベースで整理してきました。本稿では、更地価格3,000万円・借地権割合60%なら借地権価格1,800万円、承諾料はその10%で約180万円といった具体的な数字を軸に、機械設計エンジニアの視点で「どの出口が手取りを最大化するか」を判断軸ごとに解説します。なお法律・税務の記述は2026年時点の一般論であり、実行前には必ず弁護士・税理士等の専門家に確認してください。

借地権付き賃貸建物の出口が難しい理由と全体像

所有権の賃貸物件なら、売却は「買主を見つけて契約する」だけで完結します。ところが借地権の場合、土地を貸している地主という第三者が必ず介在するため、出口の自由度が一段下がります。私が最初にこの物件の売却を検討したとき、仲介会社の担当者から「地主の承諾が取れなければ話が進みません」と言われ、所有権物件との違いを痛感しました。

借地権には旧法・新法・定期の3種類がある

まず前提として、借地権は契約時期で扱いが変わります。1992年8月以前に設定された旧法借地権(私の物件はこれ)は借地人保護が非常に強く、更新を続ける限り半永久的に土地を使えます。1992年8月以降の新法(普通借地権)は最初の存続期間30年、更新後20年・10年。さらに更新のない定期借地権があり、事業用や一般定期に分かれます。旧法か新法かで売却価格も出口戦略も変わるため、まず自分の借地契約書と設定時期を確認するのが出発点です。

出口は大きく4パターン

借地上の賃貸建物の出口は、(1)第三者へ借地権付き建物を売却、(2)地主へ借地権を売り戻し(底地との同時売却含む)、(3)更新拒絶・期間満了時の建物買取請求権の行使、(4)相続による承継、の4つに整理できます。それぞれ必要な手続き・コスト・想定手取りが異なります。私は当初(1)一択で考えていましたが、承諾料や買主探しの難しさを知り、最終的には(2)の同時売却が最も合理的だと判断を切り替えました。この判断プロセスこそが本稿の核心です。

まず把握すべき3つの数字

機械設計では、まず寸法と公差を押さえてから設計に入ります。借地権の出口も同じで、着手前に必ず3つの数字を確定させます。第一に更地価格(その土地に何もない状態の時価)、第二に借地権割合(路線価図で確認、後述)、第三に残存する建物価値です。この3つが決まれば、借地権価格も承諾料も概算でき、どの出口が有利かの土台ができます。逆にこれを曖昧にしたまま地主や仲介と交渉に入ると、相手のペースで数字を決められてしまいます。私はこの物件の出口を検討する最初の1週間を、ひたすらこの3つの数字を固める作業に充てました。急いで交渉テーブルに着くより、土台の数字を1割の精度で詰める方が、最終的な手取りに与える影響がはるかに大きいからです。

地代と契約残存期間も出口価値に効く

3つの主要数字に加えて、地代の水準と契約の残存期間も出口価格に効いてきます。地代が周辺相場より安ければ買主にとって魅力で借地権価格は上振れし、逆に高ければ下がります。私の物件の地代は月2万5,000円、年30万円で、更地価格3,000万円に対する期待利回りに照らすとやや割安な水準でした。この「割安な地代」は第三者への売却時にプラス材料として使えました。契約残存期間も同様で、旧法で更新が事実上約束されている私の物件は、定期借地で残り10年しかない物件より買主にとって安心で、価格が付きやすい構造です。出口の査定では、この2要素を必ず仲介に伝えて評価に織り込んでもらうべきです。

借地権の譲渡には地主承諾が必要:譲渡承諾料(名義書換料)の相場

借地権を第三者に売る場合、借地借家法上、必ず地主の承諾が必要です。承諾なく売却すると契約解除事由になりかねません。この承諾と引き換えに支払うのが譲渡承諾料(名義書換料)で、相場は借地権価格の約10%とされます。

承諾料の相場と計算例

私の物件を例にします。更地価格3,000万円、路線価図の借地権割合が60%なら、借地権価格は3,000万円×60%=1,800万円。承諾料はこの10%前後なので約180万円が目安です。ただしこれは慣行であり法定額ではありません。地主によっては15%を要求してくることもあれば、長年の関係で8%程度に収まることもあります。私のケースでは当初12%を提示されましたが、これまで一度も地代を滞納していない実績と、建物の解体を将来こちらで負担する前提を示して、最終的に約10%まで下げてもらえました。

💡 判断のポイント

承諾料は「借地権価格の10%」が交渉の錨(アンカー)になる。相手が15%を提示してきても、それは上限側の数字。地代滞納なし・良好な関係・将来の解体負担といった材料を定量的に並べ、10%以下を目標に交渉する。感情論でなく「他事例の相場」を根拠にするのが鉄則。

承諾料以外にかかる費用

承諾料だけを見て手取りを計算すると誤ります。実際には仲介手数料(売買価格の3%+6万円+消費税)、譲渡所得税(所有期間5年超なら約20%、5年以下なら約39%)、建物滅失や測量が絡む場合はその費用が乗ります。借地権付き建物を1,800万円で売っても、承諾料180万円・仲介手数料約60万円・譲渡税と積み上げれば、手取りは1,300万〜1,400万円程度まで目減りすることがあります。私は当初この積み上げを甘く見ており、机上の1,800万円を手取りと勘違いしていました。これは典型的な失敗パターンです。

具体的に私が作った費用の内訳表を示すと、売買価格1,400万円のケースで、仲介手数料が1,400万円×3%+6万円=48万円に消費税を加えて約53万円、承諾料が借地権評価1,800万円の10%で180万円、司法書士報酬や印紙で約10万円、譲渡所得税は取得費が不明で概算取得費(売買価格の5%=70万円)しか使えないため課税所得が大きくなり、長期譲渡(20%)でも約250万円という試算になりました。合計コストは約490万円。売買価格1,400万円から差し引くと手取りは約910万円まで落ちます。取得費の資料が残っているかどうかで譲渡税は数十万円単位で変わるため、購入当時の契約書・領収書は絶対に捨ててはいけません。私は幸い父の代の取得資料が残っており、概算取得費でなく実額取得費を使えたため、譲渡税を圧縮できました。

承諾に付随する条件も交渉対象

承諾料の額だけでなく、承諾に付ける「条件」も交渉の対象です。地主はしばしば承諾の見返りに、地代の増額、契約期間のリセット、建替え時の追加承諾料(建替承諾料は更地価格の3〜5%が相場)などを求めてきます。私のケースでは、承諾と同時に地代を月2万5,000円から3万円へ2割上げたいという打診がありました。ここで安易に飲むと、買主が引き継ぐ地代が上がって売却価格が下がり、結局こちらの手取りが減ります。私は地代据え置きを条件に承諾料を10%満額支払う形で折り合いをつけました。承諾交渉は「承諾料」「地代」「建替承諾料」の3変数を一体で見て、総コストが最小になる組み合わせを探るのが正解です。

借地権価格の算定と路線価図の借地権割合の読み方

出口戦略の土台となるのが借地権価格の算定です。基本式は「更地価格×借地権割合」。この2つの変数をどう求めるかを、実務手順で説明します。

更地価格の求め方

更地価格は、近隣の売買事例、公示地価、路線価から逆算した実勢価格の3つを突き合わせて決めます。路線価は実勢の約80%とされるため、路線価÷0.8で更地の目安が出ます。私の物件は路線価が1平米あたり16万円、土地面積150平米だったので、路線価総額は2,400万円、更地の実勢は2,400万円÷0.8=約3,000万円と見積もりました。ここで複数の指標を照合するのは、機械設計で1つの測定器を信じず必ず別の方法で検証するのと同じ発想です。

路線価図で借地権割合を読む

借地権割合は国税庁の路線価図で確認します。路線価の数字の後ろに付くアルファベット(A〜G)が割合を表し、Aが90%、Bが80%、Cが70%、Dが60%、Eが50%、Fが40%、Gが30%です。私の物件の路線価には「160D」と記載があり、160千円=16万円、Dだから借地権割合60%と読み取れました。都心の商業地ほど割合が高く(70〜90%)、郊外の住宅地ほど低い(30〜50%)傾向があります。この割合は相続税評価にも売買交渉にも共通で使う最重要の数字です。

記号 借地権割合 典型的な立地
A / B 90% / 80% 都心一等地・繁華街
C / D 70% / 60% 都市部の住商混在地
E / F 50% / 40% 郊外住宅地
G 30% 地方・調整区域周辺

実勢の売買価格は評価額どおりにならない

注意すべきは、路線価ベースの借地権価格(私の場合1,800万円)は税務評価の目安であって、実際の売買価格は市場で決まる点です。旧法借地権は買主にとって「地主の承諾リスク」「将来の更新料」「建替え制限」があるため、実勢では評価額の7〜8割に落ちることも珍しくありません。私の物件も、仲介の査定は1,800万円ではなく1,400万〜1,500万円でした。評価額と実勢の乖離を理解しておかないと、売却時に「思ったより安い」と落胆します。

第三者への売却が拒否された場合:借地非訟(裁判所の許可)の流れ

地主が譲渡を承諾しない、あるいは法外な承諾料を要求して事実上拒否する場合があります。このとき借地人には「借地非訟」という救済手段があります。裁判所が地主の承諾に代わる許可を出す制度です。

借地非訟とは何か

借地借家法に基づき、借地人が第三者へ借地権を譲渡したい場合、地主の承諾が得られなくても、裁判所が「地主に不利となるおそれがないとき」に承諾に代わる許可を与える手続きです。同時に、裁判所が相当と認める財産上の給付(=承諾料に相当する額)を地主に支払うことも命じられます。つまり地主の一存で売却を止められるわけではない、という点が借地人保護の要です。

手続きの流れと期間・費用

流れは概ね、(1)借地権譲渡の相手(買主)を決める、(2)地主に承諾を求める、(3)拒否または不当な条件提示、(4)地方裁判所へ借地非訟の申立て、(5)鑑定委員会による評価、(6)裁判所の決定、という順です。私は実際にはここまで至らず承諾で解決しましたが、仲介会社と弁護士に相談した際の見込みでは、期間は申立てから6か月〜1年程度、弁護士費用と申立費用で数十万円〜100万円規模を要すると説明を受けました。裁判所が定める給付額も、結局は借地権価格の1割前後に落ち着くことが多いとのことでした。

⚠️ 失敗談

私は最初、承諾料を1円でも下げたくて地主と1年近く膠着させ、その間に有力な買主候補を1組逃しました。借地非訟という切り札はあっても、時間とコストがかかり、市場のタイミングも失う。「承諾料を数十万円値切る労力」と「機会損失」を天秤にかければ、多少割高でも早期に承諾で決着させる方が手取りが多かった、というのが正直な反省です。定量比較を怠った典型例でした。

借地非訟を使うかの判断軸

借地非訟は強力ですが最後の手段です。判断軸は明確で、地主提示の承諾料と裁判所想定の給付額の差額が、弁護士費用+1年分の機会損失を上回るときだけ検討する価値があります。差額が100万円でも、費用と時間損失で相殺されるなら、素直に承諾料を払って売る方が合理的です。感情ではなく差引損益で決めるべき局面です。

私は当時、次のような簡単な損得計算をしました。地主提示の承諾料が仮に借地権価格の15%=270万円、裁判所想定の給付額が10%=180万円なら差額は90万円。一方で弁護士費用約60万円、申立費用・鑑定費用で約20万円、さらに1年間売却が止まることで生じる機会損失(その資金を別の物件に回せば得られたはずの年5%=70万円)を足すと、非訟側のコストは約150万円。差額90万円を上回るので、この場合は非訟を使わず承諾料を払う方が60万円得、という結論になります。数字を1枚の表に落とすと、感情的な「値切りたい」という衝動に流されずに済みます。

介入権(優先譲受権)という地主の対抗手段

借地非訟を申し立てると、地主には「介入権(優先譲受権)」という対抗手段があります。これは、第三者に売られるくらいなら地主自身が同じ条件で借地権を買い取る、と申し出る権利です。借地人にとっては買主が地主に変わるだけで、売却できること自体は変わりません。むしろ地主が確実な買い手になるため、資金回収の確実性は上がるとも言えます。非訟を検討する際は、この介入権が発動して結局は地主への売却になる可能性も織り込んでおくべきです。私が弁護士に相談した際も「非訟まで行くと地主が介入権を使って買い取る展開が多い」と説明を受けました。

更新拒絶・期間満了時の建物買取請求権と時価での買取算定

売却とは逆に、地主側から「更新しない(更新拒絶)」と言われる、あるいは定期借地の期間満了を迎える場面があります。このとき借地人が持つ強力な権利が建物買取請求権です。

建物買取請求権の仕組み

借地借家法上、更新が拒絶されて借地契約が終了する際、借地人は地主に対し「建物を時価で買い取れ」と請求できます(建物買取請求権)。これは形成権といって、借地人が一方的に請求すれば地主の同意なく売買が成立する強い権利です。ただし地主に正当事由があって更新拒絶が有効な場合が前提で、借地人の債務不履行で契約解除された場合には使えません。私の物件は旧法で更新拒絶自体が地主にとって極めてハードルが高いため実際の出番は限定的ですが、権利として押さえておく意味は大きいです。

「時価」の算定と実務の相場

ここでいう「時価」は建物単体の価値であり、借地権価格は含まれない点が最大の注意点です。木造アパートで築30年ともなれば、建物の時価は残念ながら数百万円、場合によっては解体費と相殺されてゼロに近いこともあります。私の築古アパートを例に取ると、再調達価格を1平米18万円・延床120平米で2,160万円、築30年で耐用年数(木造22年)を超過しているため、時価評価は2〜300万円程度と査定されました。「建物買取請求で高値回収」という期待は、築古では現実的でないことが多いのです。

出口の種類 回収できるもの 概算手取り(私の物件例)
第三者へ借地権売却 借地権価格−承諾料 約1,300万〜1,400万円
建物買取請求権 建物時価のみ 約200万〜300万円
地主へ売り戻し(単独) 借地権価格 約1,400万〜1,600万円
底地と同時売却(按分) 完全所有権プレミアム分 約1,600万〜1,800万円

正当事由と立退料

地主が更新拒絶するには「正当事由」が必要で、自己使用の必要性などが問われます。旧法では正当事由が認められにくく、認められる場合でも地主が立退料を支払うのが一般的です。つまり借地人にとって更新拒絶は必ずしも不利ではなく、建物買取請求権や立退料という回収手段が用意されている、と理解しておくべきです。

地主に借地権を売り戻す:同時売却による高値化戦略

私が最終的に最も合理的だと判断したのが、地主への売り戻し、とりわけ底地と借地権を同時売却する方法です。ここには「1+1が2以上になる」経済合理性があります。

なぜ同時売却が高くなるのか

借地権(私)と底地(地主)は、単独ではどちらも制約付きの不完全な権利です。借地権だけでは土地を自由に処分できず、底地だけでは自分で使えず地代収入しかありません。ところが両者を1つにまとめれば「完全所有権」になり、市場価値が跳ね上がります。更地価格3,000万円に対し、借地権1,800万円+底地1,200万円=3,000万円が単純合計ですが、完全所有権としてまとめて売れば、制約が消えるプレミアムで3,300万〜3,600万円で売れることがあります。この差額を借地人と地主で按分すれば、双方が単独売却より得をするのです。

価格交渉の進め方

私が地主と進めた交渉の骨子は3段階でした。第一に、更地価格と借地権割合を根拠に「借地権1,800万円・底地1,200万円」という土台を共有する。第二に、同時売却なら完全所有権プレミアムで総額が上がることをデータで示す。第三に、増えた差額を割合に応じて按分する提案をする。ここで重要なのは、地主を「敵」ではなく「共同で価値を最大化するパートナー」と位置づけることです。私は完全所有権化で総額が約400万円上乗せできる試算を提示し、その按分で当初想定より手取りを増やせました。

💡 判断のポイント

売り戻し・同時売却の交渉は「パイの奪い合い」ではなく「パイを大きくして分ける」構図に持ち込むのが要諦。借地権だけを地主に単独で売り戻すと足元を見られて借地権割合を下回る額を提示されがち。第三者への売却という選択肢を保持したまま、同時売却の増分メリットを数字で示すと、地主も乗ってきやすい。

地主が買い戻しを渋る場合

地主に資金余力がない、あるいは底地を手放したくない場合もあります。そのときは第三者(不動産会社・借地権買取業者)への売却に切り替えます。ただし業者は転売益を見込むため査定は辛くなりがちで、私の物件でも業者査定は仲介より2割ほど低い水準でした。売り先の候補を複数持ち、相見積もりを取ることが、どの出口でも手取りを守る基本動作です。私は最終的に、仲介経由の一般個人向け査定・借地権買取業者2社・地主への同時売却提案の合計4ルートを並行して当たり、それぞれの提示額を1枚の比較表にして最も高い出口を選びました。1ルートしか当たらないと相場観が持てず、足元を見られます。

同時売却の実務手順とタイミング

同時売却を実行する場合、手順としては、まず借地人・地主の双方が同一の仲介会社(または各々の代理人)を通じて完全所有権としての売出価格を合意し、買主が決まった段階で借地権と底地の代金配分を確定させ、決済を同日に行います。ここでのコツは、按分割合を「借地権割合そのもの(私の場合60対40)」を基準にしつつ、プレミアム増分だけは折半に近づける交渉をすることです。増分400万円を60対40で割ると私の取り分は240万円ですが、折半なら200万円。一見折半が不利に見えても、地主が乗りやすくなり交渉全体がまとまるなら、時間短縮の価値の方が大きい場面もあります。ここも「取り分の数十万円」と「成約確度・時間」を天秤にかける定量判断です。

借地上の賃貸建物の相続評価と承継時の名義書換

出口は売却だけではありません。相続で次世代に承継するケースも実務では多く、その際の評価と手続きを押さえておく必要があります。私自身、この物件を子に残すか売るかを比較する中で、相続評価を具体的に試算しました。

借地権+貸家の相続評価

借地上の賃貸建物を相続する場合、評価は「借地権(貸家建付借地権)」と「建物(貸家)」の2つに分かれます。貸家建付借地権は、借地権価格に対し借家人の権利分を控除する評価で、計算式は「借地権価格×(1−借地権割合の対象外調整)」ではなく、実務上は「自用地評価×借地権割合×(1−借家権割合×賃貸割合)」で求めます。借家権割合は全国一律30%が原則。私の物件で試算すると、自用地3,000万円×借地権割合60%×(1−0.3×満室100%)=1,800万円×0.7=1,260万円が貸家建付借地権の評価額でした。売却時の実勢1,400万円台より低く出るため、相続の観点では保有継続にも一定の合理性があります。

貸家部分の評価

建物(貸家)は「固定資産税評価額×(1−借家権割合30%×賃貸割合)」で評価します。私の建物の固定資産税評価額が500万円、満室なら500万円×(1−0.3)=350万円。これに前述の貸家建付借地権1,260万円を足した約1,610万円が、この物件を相続したときの相続税評価額の概算になります。同じ資産でも売却の手取り(税・承諾料控除後で1,300万円台)と相続評価(1,600万円台)で数字が動くのが、この分野の面白くも難しいところです。

承継時の名義書換と地主への通知

相続による借地権の承継は、売買と違って地主の承諾は不要です(相続は法定の権利移転のため)。したがって承諾料も原則発生しません。ただし実務では、地主に相続があった旨を通知し、契約書の名義を書き換えておくのが後々のトラブル防止になります。私は父から相続した際、承諾料は不要でしたが、地主に一報を入れ、賃貸借契約書の借地人名義を新名義に更新し、その後の地代の振込人も変更しました。ここを放置すると、次に売却や更新を行う段階で権利関係の説明に手間取ります。

⚠️ 失敗談

相続で名義書換をしたとき、私は建物の相続登記だけ済ませ、地主との賃貸借契約書の名義更新を1年以上放置しました。その間に地主側でも代替わりがあり、いざ売却交渉に入ると「借地人が誰なのか」の確認から始める羽目に。書類上の名義と実態が食い違うと、出口のたびに余計な立証コストが発生します。相続直後に「登記・契約書・地代振込」の3点セットを揃えるのが鉄則です。

まとめ:出口は「数字の比較」で選ぶ

借地権付き賃貸建物の出口は、所有権物件より一段複雑ですが、判断の軸は明快です。着手前に更地価格・借地権割合・建物価値の3つを確定し、そこから借地権価格(更地価格×借地権割合)と承諾料(その約10%)を概算する。私の物件でいえば、更地3,000万円・割合60%で借地権1,800万円、承諾料約180万円が土台でした。そのうえで、(1)第三者売却(手取り1,300万〜1,400万円)、(2)建物買取請求権(建物時価のみ200万〜300万円)、(3)地主への売り戻し・同時売却(1,600万〜1,800万円)、(4)相続承継(評価1,600万円台・承諾料不要)を、手取りベースで横並び比較するのが正攻法です。私は当初(1)しか見ていませんでしたが、数字を並べた結果、完全所有権化のプレミアムを按分できる(3)の同時売却に切り替え、手取りを増やせました。承諾料の値切りに固執して有力な買主を逃した失敗も、名義書換を放置して立証コストを増やした失敗も、根っこは「定量比較を怠ったこと」にあります。感情や思い込みでなく、差引損益の表を1枚作ってから動く。これが機械設計エンジニアの大家として、借地権の出口で最も大切にしている判断のスタンスです。なお、本稿の税務・法律の記述は2026年時点の一般的な整理であり、承諾料の扱い・譲渡所得税・相続評価は個別事情で大きく変わります。実行の前には必ず税理士・弁護士等の専門家に確認してください。

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