賃貸契約は通常2年ごとに更新を迎えます。多くの大家は管理会社や仲介に更新事務を任せていますが、私は5棟15室のうち自主管理している物件については、更新手続きを自分でやっています。理由はシンプルで、更新事務手数料を仲介に払わずに済むからです。1件あたり家賃の0.5ヶ月分、5万円の家賃なら2万5000円。これを毎回外注していたら、年に何件もの更新でかなりの金額が消えていきます。15室を抱える私の場合、2年で全室がひと回りすると考えれば、外注し続けるだけで年間十数万円が消えていく計算です。これは決して無視できる金額ではありません。
「でも手続きが難しそう」と感じる方も多いはず。実際は、書類さえ揃えてしまえば自分でやるのはそれほど難しくありません。この記事では、私が実際に使っている手順と書類、注意点をすべて公開します。
そもそも「更新」とは何か、しない選択肢もある
賃貸契約の更新には、大きく分けて2種類あります。一つは契約書を再度交わす合意更新、もう一つは特に手続きをしないまま自動的に契約が続く法定更新です。実は更新手続きをしなくても、入居者が住み続ける意思があれば契約は法定更新で継続します。つまり「更新料を取りたいか」「契約内容を見直したいか」によって、自分で動くべきかどうかが変わってきます。
私の場合、更新料を設定している物件では合意更新の手続きをきちんと行い、更新料を取っていない物件では、特段の変更がなければあえて何もせず法定更新に任せることもあります。まずは自分の契約書を見て、更新料の有無と更新条項を確認するところから始めてください。「2年ごとに新賃料の1ヶ月分を更新料とする」などと明記されていれば、それを根拠に更新事務を進めます。
自分で更新する場合に必要な書類
仲介を通さず直接更新する場合、自分で準備する書類はそう多くありません。私が毎回使っているのは次の3点セットです。市販やネットの雛形をベースに、自分の物件用にカスタマイズして保存しておけば、次回からはコピーして日付を変えるだけで済みます。
- 賃貸借契約更新のお知らせ(更新案内文):更新月の2〜3ヶ月前に送付。更新料・新賃料・手続き期限を明記
- 賃貸借契約更新契約書:更新後の契約条件をまとめた書面。2部作成し、双方が記名押印して1部ずつ保管
- 保証会社の更新書類:保証会社利用の場合、更新保証料の案内も同封
連帯保証人がいる契約では、保証人の更新承諾も忘れずに取り付けます。これを怠ると、いざ滞納が起きたときに保証人が「更新は知らなかった」と主張する余地を残してしまいます。書類は必ず記録の残る形でやり取りし、控えを保管しておくのが鉄則です。
私は更新書類一式をパソコンの中にテンプレートとして保存し、物件ごと・入居者ごとにフォルダ分けして管理しています。前回どんな条件で更新したか、更新料はいくらだったか、保証会社の更新時期はいつか――こうした情報を一元管理しておくと、次回の更新が驚くほどスムーズになります。最初の一回だけは手間ですが、雛形を作り込んでしまえば、二回目以降は日付と金額を差し替えるだけ。自主管理を続ける上で、この「書類の仕組み化」は何よりの時短になります。紙で保管する場合も、物件別のファイルにまとめておけば、いざというときにすぐ取り出せて安心です。
更新手続きの具体的なスケジュール
更新は、満了日のギリギリに動くと入居者の対応が間に合わず慌てます。私は逆算して、契約満了の3ヶ月前から動き始めます。下の表が私の標準スケジュールです。
| 時期 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 満了3ヶ月前 | 更新案内文を送付 | 更新意思・条件変更の有無を確認 |
| 満了2ヶ月前 | 入居者の返答を受領 | 退去なら次の募集準備へ |
| 満了1ヶ月前 | 更新契約書を郵送 | 記名押印して返送してもらう |
| 満了2週間前 | 更新料・保証料の入金確認 | 入金後に契約書を返送 |
このリズムを守れば、満了日までに全ての手続きが余裕をもって完了します。郵送のやり取りは返信用封筒を同封し、入居者の手間を最小化するのがコツです。手間を惜しまない丁寧な対応は、長期入居にもつながります。
更新時に賃料や条件を見直すチャンス
更新は単なる事務作業ではなく、契約条件を見直す絶好の機会でもあります。私が更新のたびに検討するのは次のような項目です。
- 賃料の改定:周辺相場が上がっていれば微増の交渉も可能。ただし長期入居者には慎重に
- 原状回復・特約の明確化:古い契約書で曖昧だった条項を最新の基準に合わせる
- 禁止事項の追加:民泊・又貸し禁止など、近年問題になりやすい条項を補強
- 火災保険の更新確認:入居者の保険が切れていないかを同時にチェック
ただし、賃料の値上げは慎重に判断すべきです。優良な長期入居者を値上げで失えば、空室と原状回復・客付け費用で、増額分など簡単に吹き飛びます。私は「長く住んでくれている入居者には基本的に賃料を据え置く」方針です。むしろ更新時に小さな設備改善(網戸の張り替えやエアコンクリーニングなど)をサービスして、満足度を高める方が長期的には得だと考えています。
自分でやるか、外注するかの損益分岐点
更新を自分でやるメリットは費用節約ですが、すべての物件で自主管理が正解とは限りません。私は物件の立地と入居者の属性で判断を分けています。
自宅から近く、入居者とのコミュニケーションも取りやすい物件は、自分で更新する価値が十分にあります。一方、遠方の物件やトラブルの多い入居者がいる物件は、多少の手数料を払ってでも管理会社に任せた方が、精神的なコストを考えると安いと感じます。私の試算では、自主管理の更新事務にかかる自分の作業時間は1件あたり2〜3時間程度。その3時間で2万5000円の手数料を浮かせられるなら、時給換算で十分割に合います。ただし「面倒で更新を放置してしまう」性格の人は、無理せず外注した方が結果的にトラブルを防げます。
トラブルを防ぐための注意点
自主更新で気をつけたいのが、書類不備と入金管理です。私が過去にヒヤッとしたのは、更新契約書を郵送したものの入居者が押印を忘れて返送し、契約上の不備が残ってしまったケースです。それ以来、返送された書類は必ず全項目をチェックし、不備があればすぐ連絡する習慣をつけました。
また、更新料の入金確認も重要です。「契約書は返ってきたけど更新料が入っていない」という状態を放置すると、後でトラブルになります。私は入金確認をしてから契約書の控えを返送する順序を徹底しています。さらに、保証会社や保証人の更新承諾を取り忘れないこと。これらを一つずつ確実に処理すれば、自主更新は決して怖いものではありません。慣れてしまえば、年に数件の更新事務は週末の数時間でこなせる、ちょっとした節約のルーティンになります。
もう一点、火災保険の更新も同じタイミングで必ず確認します。入居者が加入している家財・借家人賠償の火災保険が切れたまま放置されているケースは意外と多く、万一の漏水事故などで「保険が切れていて賠償できない」という事態になりかねません。私は更新案内文に「火災保険の更新もお忘れなく」と一文添え、必要なら大家側で団体扱いの保険を案内します。賃貸更新は、契約・賃料・保証・保険を一度に総点検できる年に一度のチェックポイントでもあるのです。事務の節約という金銭的メリットだけでなく、リスク管理の機会としても、自分で手を動かす価値は十分にあります。
まとめ:更新は節約と関係構築の好機
賃貸更新を自分でやることは、手数料の節約だけでなく、入居者と直接やり取りすることで信頼関係を深める機会にもなります。必要な書類は更新案内文・更新契約書・保証関連書類の3点が基本で、満了3ヶ月前から逆算して動けば余裕をもって完了できます。
更新時には賃料や特約の見直しもできますが、優良な長期入居者への値上げは慎重に。むしろ小さなサービスで満足度を高める方が、長い目で見れば収益を守ります。自宅近くで管理しやすい物件から、まずは自主更新を試してみてください。一度流れを作ってしまえば、毎回の更新が確実な節約につながります。
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