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定期借家契約vs普通借家|大家にとってどちらが有利か

大家のリアル

「この物件、定期借家にしますか?それとも普通借家にしますか?」――新しく物件を貸し出すとき、不動産会社からこう聞かれて固まってしまう大家さんは少なくありません。私も大家を始めた頃は、この2つの違いをよく理解しないまま、何となく「普通借家」を選んでいました。しかし15年の経験を通じて、定期借家契約という選択肢が、特定の状況では大家にとって強力な武器になることを学びました。一方で、定期借家には客付けが難しくなるという明確なデメリットもあります。この記事では、定期借家契約と普通借家契約の違いを大家目線で整理し、どちらを選ぶべきか、私の実体験をもとに判断基準を示します。

普通借家契約とは何か、その特徴

まず、日本の賃貸契約の大半を占める「普通借家契約」から説明します。これは最も一般的な賃貸契約で、契約期間が満了しても、入居者が希望すれば原則として契約が更新される仕組みです。大家側から更新を拒絶するには「正当事由」が必要で、これがなかなか認められません。たとえば「自分が住みたいから」「もっと高い家賃で貸したいから」といった理由では、正当事由とは認められないのが実情です。立ち退きを求める場合は、多額の立ち退き料を支払うことが一般的になっています。つまり普通借家契約は、入居者の居住権が非常に強く保護されているのです。大家から見れば、一度貸したらなかなか出てもらえないという側面があります。私が所有する物件のほとんどは普通借家契約です。なぜなら、入居者にとって安心感があり、客付けがしやすいから。長く住みたいと考える入居者は、更新が保証された普通借家を好みます。安定した長期入居を期待できるのが、普通借家の最大のメリット。家賃収入の継続性という観点では、普通借家は大家にとっても悪くない選択肢なのです。ただし、いざ入居者に出てもらいたいときには苦労する、という点は理解しておく必要があります。

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定期借家契約の仕組みとメリット

一方の「定期借家契約」は、契約期間が満了すると更新されず、確定的に契約が終了する仕組みです。たとえば2年間の定期借家契約なら、2年経てば原則として入居者は退去します(双方合意すれば再契約は可能)。これは大家にとって、いくつかの強力なメリットをもたらします。第一に、期間満了で確実に物件を取り戻せること。「数年後に建て替えたい」「子供が独立するまでの間だけ貸したい」「将来自分が住む予定がある」といった事情がある場合、定期借家なら計画通りに物件を回収できます。普通借家のように立ち退き料を払う必要もありません。第二に、問題のある入居者を期間満了で退去させられること。家賃滞納や騒音トラブルを起こす入居者でも、普通借家では追い出すのが困難ですが、定期借家なら契約期間の満了をもって、合法的に契約を終わらせられます。これは大家にとって大きな安心材料です。第三に、転勤などで一時的に持ち家を貸したいオーナーに最適なこと。マイホームを定期借家で貸し出せば、転勤から戻る時期に合わせて確実に明け渡してもらえます。このように定期借家は、大家が「貸す期間をコントロールしたい」場合に絶大な力を発揮する契約形態なのです。

2つの契約形態を徹底比較

普通借家と定期借家の違いを、大家目線で表に整理しました。一目で違いが分かるようにしています。

項目 普通借家契約 定期借家契約
契約更新 原則更新される 更新なし(再契約は可)
大家からの解約 正当事由・立退料が必要 期間満了で確定終了
客付けのしやすさ しやすい やや難しい
家賃水準 相場通り やや下げる傾向
問題入居者の排除 困難 期間満了で可能
契約手続き 通常通り 書面交付など要件が厳格

この表を見れば、それぞれの長所と短所が明確です。普通借家は客付けしやすく長期安定が見込める一方、出てもらいたいときに苦労する。定期借家は物件を確実に取り戻せ問題入居者も排除できる一方、客付けで不利になり家賃も下げ気味になる。どちらが優れているという話ではなく、大家の状況と物件の使い方によって、最適解が変わるのです。

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定期借家のデメリットと注意点

定期借家には大きなメリットがある一方、見過ごせないデメリットも存在します。私が実際に定期借家で物件を貸したときに痛感した注意点をリストにします。

  • 客付けが難しい:入居者は「期間が来たら出ないといけない」契約を嫌う。問い合わせ自体が減りやすい。
  • 家賃を下げざるを得ない:不利な条件を補うため、相場より家賃を1割程度下げないと決まりにくい。
  • 契約手続きが厳格:契約前に「更新がない旨」を記載した書面を交付し説明する義務がある。これを怠ると普通借家とみなされる。
  • 再契約には合意が必要:継続して貸したくても、入居者が再契約を望まなければ退去する。安定性は普通借家に劣る。
  • 仲介会社が嫌がる場合がある:客付けしにくいため、仲介に消極的な業者もいる。

特に注意したいのが、契約手続きの厳格さです。定期借家契約を結ぶには、契約書とは別に「この契約は更新がなく、期間満了で終了します」という内容を記載した書面を、入居者に事前に交付して説明する義務があります。この手続きを怠ると、せっかく定期借家のつもりで契約しても、法律上は普通借家と扱われてしまいます。これでは大家のメリットが完全に失われます。私は不動産会社と連携し、この書面交付を確実に行うようにしています。定期借家を選ぶなら、手続き要件を正確に守ることが絶対条件です。

結局、大家はどちらを選ぶべきか

15年の経験から私が出した結論は、「物件の将来計画と入居者層によって使い分ける」というものです。普通借家を選ぶべきケースは、長期的に賃貸経営を続ける予定で、安定した長期入居を望む場合。一般的なアパート・マンションの賃貸は、客付けのしやすさを優先して普通借家にするのが基本です。私の所有物件も8割以上は普通借家です。一方、定期借家が有利なケースは明確にあります。第一に、数年後に建て替えや売却、自己使用の予定がある物件。第二に、過去に入居者トラブルが多発した物件で、問題があれば期間満了で退去させたい場合。第三に、転勤などで一時的にマイホームを貸す場合。これらの状況では、家賃を多少下げてでも定期借家を選ぶ価値があります。私は実際に、将来子供に住ませる予定だった戸建てを、それまでの数年間だけ定期借家で貸し出しました。家賃は相場より少し安くしましたが、予定通りの時期に明け渡してもらえ、計画がスムーズに進みました。立ち退き料を払う必要もなく、結果的に得をしたと感じています。大切なのは「自分はこの物件をどう使いたいのか」を明確にすること。その答えが、契約形態を自ずと決めてくれます。

定期借家の客付けを成功させる工夫

定期借家は客付けが難しいと述べましたが、工夫次第でそのハンデは十分に乗り越えられます。私が実際に定期借家物件を貸し出す際に効果があった工夫を共有します。第一に、契約終了時の「再契約の可能性」をきちんと伝えること。定期借家だからといって、必ず追い出されるわけではありません。「双方が合意すれば再契約できますし、私としては良い入居者の方には長く住んでいただきたいと思っています」と説明すると、入居希望者の不安はかなり和らぎます。実際、私の定期借家物件でも、再契約で長く住み続けている方がいます。第二に、家賃やフリーレント(一定期間家賃無料)で条件面のメリットを打ち出すこと。普通借家より家賃を抑える、あるいは最初の1ヶ月を無料にするなど、入居者にとっての金銭的メリットを明確にすれば、定期借家のデメリットを補えます。第三に、ターゲットを絞ること。定期借家は、転勤者や、数年後に持ち家購入を予定している人など「もともと長期居住を考えていない層」と相性が良いのです。こうした層に向けて「短期居住歓迎」とアピールすれば、むしろ定期借家がメリットになります。第四に、定期借家の意味を丁寧に説明できる仲介会社を選ぶこと。定期借家を理解していない仲介担当者だと、入居希望者にうまく説明できず成約に至りません。私は定期借家に慣れた仲介会社と組むことで、客付けの成功率を高めました。工夫すれば、定期借家のデメリットは決して致命的ではないのです。

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まとめ:契約形態の選択は出口戦略から逆算する

定期借家契約と普通借家契約、どちらが大家にとって有利かという問いに、唯一の正解はありません。15年大家をやってきた私の結論は、「物件の出口戦略から逆算して選ぶ」ということです。ずっと貸し続けて家賃収入を得たいなら、客付けしやすく長期安定が見込める普通借家。数年後に建て替え・売却・自己使用を予定しているなら、確実に物件を取り戻せる定期借家。入居者トラブルのリスクを抑えたいなら定期借家、というように、自分の計画に合わせて選ぶのが最も賢明です。多くの一般的な賃貸物件では普通借家が基本になりますが、定期借家という選択肢を知っているだけで、いざというときの打ち手が増えます。特に、将来の活用予定がある物件や、トラブル物件には定期借家が強力な武器になります。契約形態は、一度結ぶと簡単には変えられません。だからこそ、貸し出す前に「この物件をどうしたいのか」をしっかり考え、最適な契約形態を選んでください。それが、後悔しない賃貸経営の第一歩です。

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